ホウ素は植物も動物も必要/ケイ酸は価値ある物質

ホウ素は植物も動物も必要

 京都大学の間藤徹先生は、当時は助手であったと思うが、植物での必須元素であるホウ素が、植物細胞壁にある細胞壁ペクチンを架橋することで、従来から全くわかっていなかったホウ素の機能的働きを世界で最初に発見された。非常に大きな成果で、間藤先生から植物栄養学の啓蒙書を執筆していた私に、学会誌に掲載された同じ写真(本書 38 ページに掲載 写真 1、2)を送付してくださった。貴重なデータである。
 細胞壁は、植物細胞にあって動物細胞にはない。発見当時は世界的にもホウ素は植物のみに必要で、動物細胞には必要のないものとされていた。そこで高橋英一先生は、間藤先生の発見は、当時の一般論の説明にも通じるものとして、講義でも書籍でも(『植物栄養の基礎知識』農山漁村文化協会、1993 年)ホウ素は細胞壁にある物質の安定化に役立つ物として植物のみに必須で、動物には必要でないものと説明されていた。
 ところが、私も 1999 年 1 月に東京大学で講義の機会を与えられ、ちょうどアメリカ留学より帰国されたばかりの藤原徹先生(現・東京大学教授)にそれが間違いであることを、教えていただいた。フォルトの実験(1998 年)によると、ホウ素が欠如したエサをアフリカツメガエルに与え、飼育した親から得られた卵を採取したところ、卵自体の大きさにホウ素欠如の影響はみられなかったものの、受精後は 90%以上の受精卵で発達異常を示し、死に至ったそうだ。動物でもホウ素が必須だったのである。

イチゴ

ケイ酸は価値ある物質

 ケイ酸については京都大学で 20 年後輩である、岡山大学の教授を務められている馬建鋒先生に種々お世話になっている。彼は若い頃(2006 年)にケイ酸トランスポーターを世界で最初に単離同定し、超一流の科学雑誌Nature に投稿、受理されている。その貴重な写真を筆者の『作物の栄養生理最前線』(農山漁村文化協会、2006 年 12 月)の前書きに掲載させていただいた記憶がある。その後の彼の研究発表論文数は著しく多く、文部科学省関係者もよくご存じで、59 歳の若さで令和 4 年秋、紫綬褒章を受章されている。国際的な受賞も多い。2023 年には国際肥料協会から「Norman Borlaug
Plant Nutrition Award」を受賞したり、2024 年 6 月にアメリカ植物生物学会から、Dennis R. Hoagland Award を受賞されている。
 ケイ酸は 2015 年にすべての植物に対して「価値ある物質」として認められた。これも馬先生が、ケイ酸トランスポーターを発見し、それまでケイ酸研究は日本人中心だったが、現在は世界中の研究者がケイ酸の魅力を感じ、多数の研究が発表されたおかげでもある。人への効果研究を馬先生はしていないが、人の健康へのプラス効果も大きい。とくに、琉球大学の真栄平房子先生が古くから長寿ホルモンを活性化する事を発見されたことも大きいが、現在では、骨ホルモンともいわれるオステオカルシンもケイ素で活性化することもわかり、人の健康でも必須元素として知られている。

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