水田転作のポイント教えます!
省力多品目栽培のすすめ 清田政也さん

写真1 清田さんの水田転作圃場
左から取材に同行した小西安農業資材の鈴木望文さん、ネイグル新潟の清田政也さん、
プロジェクトに携わっている「研修生」の渡辺大夢さんと棚橋あかねさん。水田転作圃場(図1-❷)をバックに。
田んぼを畑作に転換、省力栽培にチャレンジ
今回は株式会社ネイグル新潟の社長室室長の清田政也さんの取り組みを紹介しよう。清田さんは阿賀野市内に所有する圃場のうち、田んぼの一部を 30a の畑作に転換した(写真 1)。名づけて「田んぼで野菜を作ろう ZE !プロジェクト」はスタートから7年目となる。昔に比べて直売所が多くなり、「生産して売る」という出口ができているからそこに向けてどれだけやれるか試している、という清田さん。また、農家の数は減少をたどり、水稲の新規就農者はほとんどいないものの、園芸での新規就農希望者は少なからずおり、園芸ならば需要は伸びていると感じたため参考になればとはじめたプロジェクトだ。
ダイコン、キャベツといった主要品目だけを栽培しては面白くないと考え、少量多品目で周年栽培を実践中。少人数で活動するため、省力、機械なし、余計な手間なし、をモットーとしている。栽培は株式会社ネイグル新潟の若手社員に時々担当してもらい、「研修」という体裁をとっている。繁忙期の多いときで 5 人程が活動しているそうだ。
まずは、清田さんが出荷している市内の農産物直売所「わくわくファーム」「百笑市場」を覗いてみた。なるほどイタリア野菜の紅菊芋や、オクラ、ナスといった野菜を他の人とはちょっと違ったネーミングをつけて販売している(写真 2)。さらにラベルには甘うまミネラル栽培などと目をひくキャッチフレーズを加えてあるのが印象的だ。目玉商品のオクラは「やわらかオクラ」と名づけ、味比べできるよう、誰もやってなかった四つの品種をミックス。普通はここまで大きいと硬くなるが、この栽培法はやわらかいのが特長だ。ほかにもナスには「ジューシー焼きなす」と食したときのイメージをかき立てるネーミングをつけて購買者にアピール。工夫を凝らした販売戦略を実行していた。


写真2 直売所で販売されているオクラ
「ハニー・フレッシュ」を使ったことによりミネラルを含み、「甘くておいしい」をアピール。
珍しい野菜にはレシピなども合わせて提案するなど工夫をしている。
省力栽培を可能にしたポイントとは

図1 清田さんの圃場の簡略図
各品目の間には2mの間隔を空けている。
青い部分は現在、保留としている部分。
次に、転作した圃場に案内してもらった。栽培品目は図 1 のとおりで周年栽培をしている。ただし、真冬は育苗ハウスを利用しての少量栽培となっている。
取材当時(2022 年 8 月)は直売所にもあったオクラとナス、収穫が遅れたジャガイモなどが旬を迎えていた。土をかける手間が労力となるため、超浅植えのマルチ栽培をしており、マメトラ(小型農機)で耕うんするだけと清田さんは言う。ジャガイモの脇ではニンニク、ソラマメを栽培。とくにマメ類の連作はご法度と言われるが、すでに 3 年の連作を実現できている。土の手入れを怠らなければ連作は可能、と清田さんは言う。
「田んぼを畑にするとき、連作障害があると消毒するしかなくなるのですが、その場合、水田に戻しクリーニングをすればいい。客土はせ、排水して高く畝を作り、マルチ栽培にして通路を広く取るんです。新潟県は米どころで籾殻は余るほどあるから、通路を兼ねて籾殻を撒けば堆肥にもなるんですよ」と清田さん(写真 3)。

写真3 畝と畝の間に敷いている籾殻
これが良い堆肥となっている。
そして昨今、肥料の値段高騰が話題だが、「栽培部分だけ局所施肥すれば無駄なく省力でできる」と清田さんは言う。また、「病気が発生してもこの圃場は 2m 間隔で栽培していて広いので、横にずらせばいいだけ」とも。圃場では密集させるとどうしても病害が増えてしまうため、畝幅に 2m 間隔の余裕を持たせて土地をリッチに使っているのだ(図 1)。病気が発生すると農薬が必要となり、その手間で手が回らなくなることを考えると、この間隔もうなづける。さらに余計な草が生えるため、通路は作らないようにしている。すると干ばつ対策にもなるので一石二鳥なのだそうだ。清田さんは上記のポイントの他、まずは基本の土作りで土壌を肥沃に、病害耐性をつけているため、連作も実現できている。これがまさに省エネ栽培方法で、連作障害対策も兼ねているのである。
肥沃な土壌と病害耐性を強固にするための施肥にはコーティング肥料(素材で被覆した肥料)を使わないというこだわりようだ。欠かせない肥料・土壌改良材は、「ハニー・フレッシュ」、「腐植無双 極」(以上、販売総代理店は小西安農業資材株式会社)、「ボカシ大王Ⓡエコ」、「乳酸卵殻」(以上、川合肥料株式会社)、「HS-2Ⓡプロ」(株式会社ケーツーコミュニケーションズ)、「母肥力 10」、「ハイグリーン」(以上、エムシー・ファーティコム株式会社)など 8 種類(写真 5)。追肥も消毒も潅水もほぼしていない。
これらの肥料のおかげで土壌の団粒化ができ、手入れが不要で理想的な土壌となるため省力化を実現できている。

写真4
水田があったことを物語る水栓

写真5 主に使っている肥料
「ハイグリーン」「母肥力10」「腐植無双 極」「ボカシ大王Ⓡエコ」
「ハニー・フレッシュ」「HS-2Ⓡプロ」など。
肥料の効力を詳細に分析してみる
前述した肥料で最も役立っているのは、土作りで使う「ハイグリーン」(表 1、表 2)。味の向上、耐病性、昨今の異常気象のなかでもこれがあると大丈夫と清田さん。N、P、K 以外のものは「ハイグリーン」で補っている。ただ、これは誰でも買えるものではない。販売当初から選ばれた販売店への流通となっているためである。化成肥料では、「母肥力 10」(表 2)。特有の微生物分解型緩効性チッ素を含むノンコートロング肥料で、チッ素成分の流亡を抑制する機能もあり、肥料成分の利用率が高いことが大きな特長だ。そして次に「腐植無双 極」(表 2)。天然腐植酸を約 62% 含み、わずか 2 袋 30㎏で堆肥 1t 分の腐植酸を供給できるそうで保肥力、根作りに効く。発酵肥料では「ボカシ大王Ⓡエコ」。
高タンパク質の飼料を与えられているうずらのふんをベースに、うずら卵、鰹節の煮かす、植物のかす、コンブかす、カニがらなどを添加し、スムーズな肥効を示すように発酵させたボカシ肥料である。チッ素成分を強化させるため、フェザーミール(食鳥の羽毛を原料とする肥料)を追加している。成分は、N:5.4%、P₂O₅:4.5%、K₂O:2.8% で、100%有機肥料だ。この三つがあれば、水稲、園芸、花もほぼうまく栽培できると清田さんは言う。ただし、畑作においての施用量は、水稲作の 2~ 2.5 倍と考えておいてほしい。
ところで、最近多くの試験で明らかになったことだが、苗作りと最後の収量アップにバイオスティミュラント(BS 資材)である、化学薬品を使わない日本発、世界初のフミン酸、フルボ酸の水抽出液「HS-2Ⓡプロ」(2000 ~ 5000 倍希釈液)と水和タイプの粉体ミネラル肥料「ハニー・フレッシュ」(300 ~ 500 倍希釈)との混合液を葉面散布しても良いし、潅注しても良いと筆者は考える。「HS-2Ⓡプロ」は根の発生、生長を促すだけでなく、「ハニー・フレッシュ」に含まれているミネラル元素の吸収を促進してくれる。丈夫な苗ができ、「今までの苗作りは何だったのか」とさえ思う、まさに目からウロコの BS 資材だ。苗がしっかり育ち、収穫期に散布すると収量アップは確実で、その効果に驚かれる方が多い。ただ、費用対効果を考えると、使用量が少なくて済む育苗段階での使用を最初にして、その効果を体感されたら迷いも吹き飛ぶと思う。
なお、天然有機肥料はそのままではまったく吸収されないと思われる読者も多いと思うが、第 2 章 5 でも紹介する淡路島の落合良昭さんは魚カス肥料を主として使用し、料理店の板長からすばらしくコクのある出汁がとれるタマネギという評判を得ている。
さらに大切なことなので繰り返し強調したいが、東京大学の森敏先生、西澤直子先生達はヘモグロビンのみで水稲が登熟まで完全に育てられる実証実験をされ、根部の電子顕微鏡写真で植物根は巨大分子であるヘモグロビンを吸収する能力(これをエンドサイトーシス:細胞貪食という)があることを 1978 年に発見し、公表されているのである。

土作りの基本を忘れずに省力でおいしい野菜を作ろう
意外に思われるかもしれないが、野菜も水稲も同じ肥料で良い。昔は水稲用肥料では収穫量が低下する秋落ちの発生で悩まされた戦後初期の時代が長くあり、硫黄を含む肥料は水稲では使用しないよう指導されていた。長年そうした時代が続き、現在では多くの水稲栽培で硫黄欠乏が散見されるようになった。水稲も硫黄施肥は必要である。第 1 章 12 に掲載したように、2015 年以前まではイネ科植物に必要なことはわかっていた。岡山大学の馬建鋒先生らのケイ酸トランスポーターの発見(2006 年)などによりケイ素研究が世界各国で急激に盛んになり、稲科作物以外も高等植物には価値ある物質と定義し直され、野菜、花などにもケイ素施用が必要であることが世界的に認められたことも大きい。
清田さんが案内してくれた産直所の生産者の売り上げ目標額は、多くが約 1000 万だという。ハードルは高いが、良い肥料を使えば実現可能である。清田さんは、堆肥を入れれば間違いないと言う人が多いが、それは間違いと断言する。筆者もそれに同意する。多くの皆さんが間違っているのだ。
世間でいわれている堆肥は家畜ふんで作った堆肥を指している。チッ素、リン酸が過剰に含まれ、亜鉛、銅などの元素はリン酸や有機物に吸着・固定され、不可給化している。ホウ素はほとんど含まれていない。それに微生物活性が高くなるとマンガンも不可給態化する。すなわち堆肥はミネラル不足が欠点だから、ミネラル肥料を十二分に施用すると収量も品質も良い農産物が収穫できるのである。
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